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『ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし』

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

東京藝術大学大学美術館で開催中の『ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし』展。

シャルフベックは1862年フィンランド生まれの女性画家だそうで、この展覧会で初めて作品を見ることができました。

ホームページにシャルフベックについてという略年譜と、シャルフベックを読み解くキーワードというページがありましたので、ご参考までに。

チラシにも載っていたので、一番楽しみにしていたのが『快復期』という作品。

寝癖をつけた可愛らしい少女が植物を手にしている絵。

この子が病気から快復しつつある絵なのかな、良かったねぇ、可愛いねぇと思って勝手にほのぼの見ていたのですが。

説明を読んでみると、一方的に婚約破棄されたことから自分自身が立ち直ってきた、という意味合いが含まれているのではないか、と。

3歳の時、事故が原因で一生杖を手放せなくなった彼女は通学ではなく家で家庭教師と共に勉強をすることに。

その家庭教師に素描の才能を見いだされ、のちにフィンランド人の画家に指導を受け才能を磨いていった、と。

1880年に描かれた『雪の中の負傷兵』

 

 

 

 

この作品がフィンランド芸術協会に150ルッカで買い取られ、1,500ルッカの奨学金を手に入れます。

当時18歳だった彼女は、その奨学金で1880年の秋にパリへ留学。

1883年パリのサロンに初参加。同年、フランスで出会ったイギリス人画家と婚約。

そして『快復期』が描かれたのは1888年。

1885年 23歳の時に、手紙で一方的に婚約破棄を告げられた彼女は、そこから3年ほどかけて、ようやく心の傷が癒えてきたということだったのでしょうか。

彼女は、友人たちに元婚約者の名前が書かれた手紙を破棄するように依頼し、現在も婚約者の名前や、婚約破棄の理由は分からないそうです。まさか、あの可愛らしい絵にこのようなストーリーがあったとは。

この展覧会で、私が一番好きな作品は『少女の頭部』です。

23.5×14.5センチの小さな絵ではありますが。

その少女の瞳の美しさと、一見すると荒々しく見える筆遣いがとても印象的でした。

『鎧を着た少年』も好きでした。残念ながら、お見せできる画像がないけれど。

『断片』という作品は、額縁も含めて素敵だったなぁ、と。

この作品も、31.5×34.0センチで、さほどは大きくないのですが印象的でした。

『炭焼き職人』も良かったなぁ。

『快復期』の椅子もそうでしたが、彼女の描く籐のカゴは、まさにそこに実在するかのようでして。機会がありましたら見てみてくださいませ。

話は飛びますが。

2012年にフィンランド国立アテネウム美術館で開催された彼女の大回顧展では、フィンランド史上3番目の動員数を記録したとか。

その際、『ラーセボリの風景(真夏の夜)』という作品の下から『子供を抱く女性』という作品が発見されたそうです。

Schjerfbeck painting found to conceal a previously unknown work

今回の展覧会では、少し離れた場所に展示されていたので大きさの比較ができなかったのですが

『子供を抱く女性』は 45.0×54.5センチ

『ラーセボリの風景』は  52.0×41.5センチ

なるほど、確かにほぼ同じなんですね。

それにしても、ここまで仕上げておきながら どの部分が納得がいかなかったのか。

そして作品を剥がさず、上に別のキャンバスをはるのは、絵画の世界では珍しいことではないのでしょうか??下にキャンバスがあっても、邪魔になったりはしないんだろうか??と

素人には少々謎でありました。

キャンバスの張り方というページを見ていたら、結構難しそうだなぁ。

シャルフベックは、自身が関心を持っていた技法を自画像で試していたそうで年代によって様々なタイプの自画像が展示されていました。

私が一番好きだったのは、1895年に描かれたという自画像。

こちらの自画像は1915年に描かれた『黒い背景の自画像』。

彼女を尊敬する画家エイナル・ロイターに出会った頃でしょうか。19歳年下のロイターに恋心を抱いていたというシャルフベック。

1919年 シャルフベックが提案したノルウェー旅行に出かけたロイターが、現地で出会った女性と婚約するという、なんとも切ない結果に。ショックを受けた彼女は心臓を弱らせ、2ヶ月間の通院が必要だったとか。

ロイターとの交友は、彼が結婚後も続いたそうですが。

自画像を傷つけたり、その作品が残っているのを目の当たりにすると、こちらまで哀しくなってきてしまいました。

そのことだけがきっかけではないとは思いますが、彼女の作風が顕著に変化していくのを展示を通してハッキリ感じることができました。

こ、こんなにも変わっていくのか、と。

展示前半が、綺麗で写実的な感じだとすると。後半は、擦りガラスを通してみたような、なんとも抽象的な感じ。

私の趣味としては、前半の作風が好みなのですが。

私の趣味はさておき、生涯を通じて彼女の作品が評価されているからこそ本国では大回顧展も盛況だった訳で。

1人の画家の作品だけで構成された展覧会は私自身初めてだったので、彼女の絵を通じて彼女の生涯をたどる旅をしたような感覚に陥りました。

もし、あのことがなかったら。もし、失恋が1回だけだったら?

もし、ロイターと結婚していたら?

彼女の絵は、どのような変化をみせていたんだろう?

今から、そんな”もし”を投げかけても仕方ないのですが。ついつい考えてしまいました。

最後に、今回私が購入したグッズを。

【A4クリアファイル】

中に紙を入れてみると、少女の姿が

【型ぬきポストカード】

通常の葉書と比較してみますと

あとは、『パン屋』の絵はがきを購入。

ただ綺麗とか、可愛いとかだけで見るのではなく、

その時の画家の心情が伝わってくるような展覧会だったなぁ、としみじみ思うのでありました。