現在、東京都美術館で開催中のプーシキン美術館展》。
会場に入り、まずはプーシキン美術館の館長さんの文章を読んでびっくり。
出品作品の多くは日本で初めて公開するもので、この展覧会のためにいくつかの作品を額装ともども特別に修復した、と。
絵だけでなく、額装も!
でも「この作品を修復しました」という説明は私が覚えている限り1点しか書いてなくて。
なんて、慎ましやかな、と。
これも直したんですよ~!!って他にも少しは出てくるのかと思ったら。
なんて、慎ましやかな。
ルーヴル美術館では、額縁を専門に扱う部署があって、なるべくその絵が描かれた時期と同じ時期に作られた額をつけるようにしている、と聞いたことがあるのですがプーシキン美術館ではどんな感じなのかしら。
さて。
1章 近代風景画の源流。
17世紀に始まる風景画の黎明期の作品が展示されていました。
そもそも西洋画の歴史において、風景はながらく独立した主題でさえ
ありませんでした。ただの「背景」でしかなかったものが注目を集め
やがてジャンルとして一人歩きを始める過程。
すごい。すごい出世だ風景。
ただの背景が、全面にでて1つのジャンルにまでなるという。
「絵になる風景」って言葉は、それまで「は?」って感じだった訳ですよね。
「風景だけなんて絵に描かないよ」みたいな。
何度も書いてますが、印象派が当時としては最先端だったというのを何かの展覧会で知って「!!!!!」と。
私にとっては印象派作品は昔からある伝統的なものというイメージだったので。
まぁ、昔からあるのは今の時代を生きる私にとってはそうでも、 印象派が生まれた当時は違った訳で。
風景画のない世界があったというのも不思議といいますか。
限られた人しか持てなかった携帯電話が、まさかこんなに沢山の人が持つ時代になるとは想像できなかったけれど。
生まれたときから、その状態が普通な人たちもいる、みたいな。それと同じ…… というには無理があるか。
1章で私が気になった作品について、いくつか書いていこうと思います。
出品作品リスト4
『ルイ14製の到着、ヴァンセンヌ』
アダム・フランス・ファン・デル・ムーラン工房
98.6×130.7センチの絵。
この絵の中央より奥にお城と広大な庭園が描かれているのですが。
数多くの注文をこなすため、しばしば既存のイメージを再利用しながら
制作を行っていた。
城の描写は過去作からの転用
という説明が。
でも転用とは言え、今の時代のようなマウスでクリックしてコピペではなく、1から描かなくちゃいけないわけで。
前景はムーランが描き、後景のお城の部分などは工房が描いたという説明に「うん、なるほど確かにタッチが全く違う」。素人の私から見ても納得。
ですが大量の注文をさばくには洋の東西を問わず工房、お弟子さんたちの存在が不可欠で一定の標準のものを生み出し続ける苦労もあったんだろうなぁと妄想。
出品作品リスト6
『五月祭』
ジャン=バティスト・フランソワ・パテル
【#プーシキン美術館展 作品の旅vol.16】#メーデー の語源の五月祭。5月1日に夏の訪れを祝います。中央に立つメイ・ツリーの下で戯れる男女。木にかかった花の冠は、5月の女王に選ばれた少女に贈られます。いったい誰になるのかな…?
ジャン=バティスト・フランソワ・パテル《五月祭》1730年代前半 pic.twitter.com/k7PEXEh0b2— おじさん@プーシキン美術館展【公式】 (@pushkin2018) May 1, 2018
古典文学に着想を求めない制作態度と、身振りにもとづく感情表現が
特徴的な、いわゆる雅宴画(フェト・ギャラント)
この言葉は、またいずれどこかの展覧会でも出てきそうだ、とメモメモ。
そして、この画家のプロフィールが図録に書いてあるのですが。
うう、40歳で没したといわれる理由に涙。
本展の図録は作品の説明はもちろん、画家ひとりひとりのプロフィールが掲載されているので、より絵に親近感を抱くというか。
こういう人が描いたんだ、というのを知ることが好きな私としてはとても嬉しい図録でした。
出品作品リスト8
『狩猟後の休息』
ジャック・ラジュー
この展覧会のために修復された作品という説明が。
出品作品リスト10
『日の出』
クロード=ジョゼフ・ヴェルネ
20歳ぐらいのときにイタリアへ渡り、その後20年滞在した画家なんだそうで。
はて、その間はどうやって生活費を稼いでいたんだろうか、とか余計なことを考えてみたり。現地で絵を売っていたのかしら。
とりわけ廃墟を好んで描いたそうですが、廃墟ってどの時代にもやはり魅惑的なジャンルなんだな、と思ってみたり。現在でも、廃墟の写真集とかありますものねぇ。
どこかもの寂しげでちょっと不気味さもありつつ、かつては華やかだったであろうその光景を思い起こしてみたり。
この作品と対になる『日没』も隣に展示されていました。
出品作品リスト12
『パンフィーリ邸の庭園、ローマ』
クロード=ジョゼフ・ヴェルネ
何が驚いたって、18世紀の風景画は実際には別のところにあるものを組み合わせてひとつの風景が描かれている場合がある、という説明。
風景画は風景をそのまま描くものなのかと。いやその、多少は木の位置を移動したりとかあるのかなぁ、なんてぼんやり思っていたものですから。
そうですよね、別に見たままに描かなきゃいけない決まりはないわけで。
理想の風景を絵にする、という発想がまるっきり私に欠けていただけでして。
出品作品リスト13
『水に囲まれた神殿』
ユベール・ロベール
ロベールは通称”廃墟のロベール”と呼ばれた画家で架空の風景画を得意としたそうで。
この作品は、1760年にイタリア南部の遺跡パエストゥムを訪れたことが制作の基盤になっていて、実際には 1780年代作品とのこと。
20年以上、頭の中で構図を熟成していたんでしょうか。
実際の旅行中の素描では、神殿がさほど朽ちていないし何よりも海に囲まれていないそうで。
図録には、ちゃんとそのスケッチが掲載されているという!なんという親切な。
【 #プーシキン美術館展 作品の旅vol.8】
ローマ滞在の経験をもとにノスタルジーたっぷりに描かれた《水に囲まれた神殿》。廃墟ブームの先駆けかも。…おや、よく見ると一生懸命に犬かきしてる!絵のどこにいるか会場で見つけてみよう!ユベール・ロベール《水に囲まれた神殿》(部分)1780年代 pic.twitter.com/obAUg3QjVp
— おじさん@プーシキン美術館展【公式】 (@pushkin2018) March 15, 2018
絵のなかに泳ぐ犬を見つけたときは嬉しくなってしまいました。
出品作品リスト14
『ついに開いた牢屋から(春の祭日)』
【#プーシキン美術館展 作品の旅vol.12】
意味深なタイトルはロベールの悲痛な体験。ルイ16世に仕えていた彼は、フランス革命の中で危うくギロチンにかけられるところでした…。間一髪で難を逃れ、釈放後に描いた作品です。ユベール・ロベール《ついに開いた牢屋から(春の祭日)》1794年頃 pic.twitter.com/xcoN1evrGB
— おじさん@プーシキン美術館展【公式】 (@pushkin2018) April 10, 2018
本作品を手がけていたときロベールは牢屋にいた、と説明にありました。
ジャコバン派による恐怖政治が横行していた時期だそうです。
どのぐらいの期間を牢屋で過ごしたのは分からないのですが、60歳ぐらいで牢屋に入れられてしまうとは。
ロベールは庭園の設計や、ルーヴル美術館の創設にもかかわった、とか。
多才な方だったんですねぇ。この人の絵をまとめて見てみたいけれど、近々どこかで展覧会ないものかしら。
出品作品リスト16
『街道沿いの農場』
ジャン=ルイ・ドゥマルヌ
「街道」と呼ばれるシリーズを1800年代に集中して手がけていて、一本道を核に構成されるその日常風景の数々は、同時代の批評家から高い評価を受けていたとのこと。
浮世絵の東海道五十三次や富嶽三十六景が名所絵(風景画)を確立したというのを思い出しながら見ていました。
って、この調子で書いていくと終わらなそうなので。
最後に1つ。これは第2章の作品なのですが。
2章
出品作品リスト19
『牛のいる風景』
ジュール・コワニエ/ジャック・レイモン・ブラスカサ
動物たちの精緻さもさることながら、巨木の3D感ときたら!
コワニエとブラスカサはどちらもフランスの画家で、この絵は2人の共作。
ただブラスカサは風景描写が苦手だったそうで、コワニエが風景を描くという役割分担だったそうです。
ほー!こういう作品もあるんだなぁ、と。
互いの得意分野を活かした作品。これ以外にもあるのか気になります。
グッズについて
で、ショップで購入したグッズ。
図録
まず私が惚れ惚れした図録。
表紙の帯は4種類から選べるそうです。
【★販売再開★ 公式図録 帯4種セット】
お待たせしました~!!本日より帯4種セットが再入荷です。
会場の特設ショップでのみお買い求めいただけます。■4種の帯が付いた完全版:¥2500
■帯4種のみ(本体なし):¥200レジにてお声掛け下さいませ!
(写真は帯のイメージです)#プーシキン美術館展 pic.twitter.com/ShC3IzPVLl— おじさん@プーシキン美術館展【公式】 (@pushkin2018) May 25, 2018
ええ、私は『牛のいる風景』を迷いなく選びました。
私のように1種類のみの帯が付いた図録は税込¥2,300でした。
”旅の思い出を綴じ込んだスケッチブックをイメージした”というのが納得の形状。
薄い色で罫線が引かれたスケッチブックの上に自分の見た風景(画)がメモ(解説)とともに手元に残った感じで。
あぁ、この風景も見た。うん、これも見たよねぇ。楽しかったなぁ、楽しかったなぁ、美しかったなぁって思い出すのも楽しい一冊。
作品の解説と画家のプロフィールが充実
図録に珍しい栞つき
注目作はアップ画像もあり
当時の風景写真や、参考作品も掲載
実際の風景写真も掲載
風景画をさらに知りたい人へのブックガイドも充実
とまぁ、図録に惚れ惚れしております。
ショップには展示作品の絵はがきが16種類ほどあったと思います。
ビスケット
最近は、ついつい食べ物を買ってしまうことが増えまして。
”旅するフランスビスケット”
旅するフランス風景画MAP入りの一口サイズクッキー。
甘じょっぱさ加減がちょうどいい!
ついつい、もう1つと手が伸びてしまいます。
一度分解して再度組み立てようとしたら、なかなか難しかったという。
これを何百個、何千?個も組み立てた人たち凄いなぁ。
このクッキーだけ売ってないだろうか、と 販売者の㈱Eastを検索してみると……
ミュージアムショップの運営をされている会社さんでした。
あれ。クッキーの会社じゃなかった!失礼しました。
直近ですと、プラド美術館展や
仁和寺と御室派のみほとけ展
おお!
特に仁和寺の方では、スタッフの方がとても熱心で商品の説明を丁寧にしてくださってとても感じが良かったんですよねぇ。もちろん品揃えも良かったなぁ。うっとり。
あぁ、若冲展も!
三菱一号館美術館のプラド美術館展も!!と過去に手がけられた展覧会のショップの写真をみて懐かしんでおります。
奈良にあるロシア雑貨専門店『カナカナ』さんプロデュースによるロシア語のアルファベットにちなんだグッズも可愛かったです。
A4クリアファイルを購入。
やはりマスキングテープも購入すればよかった……。
アトレ上野のチケッ得!サービス
最後に。
お腹が減ったので、JR上野駅近くのGRILL1930つばめグリルへ。
まずは、木枠が置かれまして。
そこへお目当てのハンブルグステーキが。ぐふふ
季節野菜の和風ハンブルグステーキ。
現在、アスパラガスと新玉ねぎのフリットが。
和風ソースのかかった200グラムのハンブルグステーキ。
美味しかった。あっという間になくなってしまった。ご飯は少なめにしておいてよかった。
そうそう、なぜここでご飯を食べたかというと。
アトレ上野のチケッ得!サービスが利用できるから。
上野にある対象の施設を利用したチケットを見せると、つばめグリルの場合はコーヒー(ホットかアイス)が無料という。
サービス内容は3ヶ月に1回見直されるそうですが、もし機会があればまた利用してみたいと思う今日この頃です。