6月6日から上野の森美術館で始まった《ミラクルエッシャー展》。
「あの”だまし絵”の人の展覧会だな」という認識しかなく。
展覧会も行こうか行くまいか、どちらかといえば見なくてもいいかなぁという罰当たりなことを考えておりましたが。
気になった、ということは興味があるということだろう、きっと展覧会が終わってから残念がるパターンに違いない、ということで。
たまたま平日に休みが取れたので昨日行ってまいりました。
私はエッシャーという人物について何も知らなかったも同然だったんだな、と。
”だまし絵”もペンなどで描いたものだとばっかり思っていたらリトグラフだったし、版木を彫る技術が恐ろしく高く細かく美しく、この作品を生み出す発想力はどこから来てどんなことを日常考えていたんだろうか、とか次から次へと軽く脳内が揺さぶりかけられている感じで面白かったです。
展示を見終わる頃には上下左右ってなんでしたっけ?
重力ってなんでしたっけ?二次元?三次元?みたいな感じになり、ちょっと足取りもふらついていたような。
それぐらい面白くて引き込まれる世界でした。タイトル通りミラクル!!
グッズを購入し出口へ向かうところで配布されていたのが、うちわとあぶらとり紙。
特別協賛の会社さんが作られたようで、会社名と電話番号がドドーンと入っています。
いやぁ、この作品『写像球体を持つ手(球面鏡の自画像)』も非常に素晴らしかった。
こちらは第6章に展示されています。
絵はがきだと、こちらのモノクロバージョンなのですが。
展示品は、うちわに描かれているのと同じで金色の紙でした。
作品の真正面に立つと、少し照明の感じで暗く感じるかもしれませんが。
少ししゃがんで見ると、これまたなんと綺麗な輝きを放つことか!!
これから行かれる方、ぜひ少し角度を変えて見てみてくださいませ。
すごい美しいです!!!球体を持つ手が、まるで本物のよう!!!
球体のなかに映っているエッシャーさんや部屋のなかのものを見るのも楽しいですが持つ手も美しい!!!
この作品を含めて展示してある、あの一列だけでも1時間は見ていられるぐらい、それぐらい素晴らしいです。
絵で描くのも大変そうなのに、それを彫る!!!!!!!!!!!
絵だけじゃ物足りないとかではなく、リトグラフにしか出せない表現だからこそ、リトグラフで制作するのかな、と。
何点かリトグラフの習作と完成したリトグラフを並べて展示してあるのですが『ラヴェッロとアマルフィ海岸』は習作もリトグラフもどちらも好きだなぁ、と。
習作は彩色されているため、海の色も美しく全体的に柔らかい感じなのですがリトグラフになると山の斜面の感じや、風景がよりパキっと現れてきて。
海の表情も良かったなぁ。
正直、まだリトグラフとかメゾティントとか技法の名前も違いも理解できていない状態なのが残念。
浮世絵は、描いた絵を版木に裏返して貼ってその上から木を削りますよね。
リトグラフとかって、そもそもどうやって下絵を写すんだろうとか、そういう初歩的なことも分かっていないという。
分かりやすい説明の載った本もしくは動画がないか探してみよう。
(って、浮世絵のときもそういって本を買ったまま読んでないな……)
『写像球体を持つ手(球面鏡の自画像)』の並びに展示してあった『眼』。
こちらはメゾティント技法というもので制作されたそうで。
何しろ、質感がすごくて。瞳の濡れている感じ、眼球の柔らかそうな感じと丸み、まつげの細かな描写、皮膚の細かな再現。
もう、すべてが二次元であることを忘れさせるというか。
メゾティントは色の階調を表現できるけれど、とても労力と時間がかかる技法とのことで、エッシャーでさえ8点しかこの技法で制作していないそうです。
画集や絵はがきでは、やはり本物を見ることには敵わない部分があるんだな、とまざまざと思いました。
当たり前じゃないかそ、そうですよね。
私、《バベルの塔展》で時間が無くて殆ど版画のコーナーを見られなかったんです。
もったいないなぁ。非常にもったいないことしたなぁ。
版画の魅力を知らなすぎたんだなぁ、あの頃は。版画、すごい。恐るべし。
で、絵はがきを迷った話。
そうなんです、すごくたくさん用意されていて。
今回の展示にはないものも含まれてはいますが、こ、これも欲しい、あれも欲しいみたいな欲にかられて。
絵はがき選ぶのに迷いすぎ、選んだら選んだ満足感と達成感で。
マスキングテープも欲しかったのに、完全に忘れて帰ってきてしまいました。残念すぎる。
絵はがきは今回の展覧会用に作られたものではなく、海外で作られたもののようで。
香りが、香りが異国の香りでした。海外で購入した絵はがきって、独特な香りがするときないですか?
私、この独特な香りが好きなんです、と謎の告白。
(そして香りが少しでも飛ばないよう絵はがきを紙袋に戻す)
昨日11時頃は、第1章が一番混雑していた気がします。
いきなり、すごい作品が続々並んでいるものですから心の準備(?)も整わぬままにエッシャーの世界へ放り込まれる感覚でした。
壁紙の色が黒で、下に紫色のラインが入っていたのも宇宙っぽくて素敵だったなぁ。
細かいところまで見たい作品が多く、どうしても立ち止まって見たくなってしまうので混んでしまうのは仕方ないかなぁ、と。
展示をひと通り見て、また第1章に戻るとその超絶技巧さがさらに際立つといいましょうか。
あぁ、貸し切りで見られる会とかないかしら。ないですよねぇ。
第1章で展示されていた作品の絵はがき『版画画廊』。
「こんな変わった作品は自分でもいままでに作ったことがありません」とご本人が仰ったという作品。
1人の青年が風景画を見てるはずが、視線を右へ向けていくとあれ?!
実は青年も絵の一部、ん?!?!という。面白さを感じつつ、第1章の早い段階から脳が混乱。
もう考えるな、感じろ!みたいな(??)。
第3章のテーマは風景。
『夜のローマ「トラヤヌス記念柱」』の絵はがきがなかったのが残念。
展示されている作品は、パソコン上で見るよりも線が細かくて綺麗でした。
『静物と街路』
作品を見つめ、ふむふむ、これも細かいなぁ、机の表面の線の細かさたるや、と思いつつ次の作品を見るために数歩あるいたところで。
待って!!待って!!と脳内から声が(なんだそれ)。
なにか違和感を感じないの??という問いかけが(大丈夫か)。
慌てて絵の前に戻りましたら、ああああー!!!
全然、普通の街路じゃなかった!
てっきり、街路を家のなかから見下ろしている作品だと決めつけていたら!!!!!!
ゾクゾクしました。違和感なさげにみえて、この明らかなるありえない光景。
もう自分の見ている普段の光景すら信じられないというか。
自分の脳が正しく判断できているか自信無くなってきた!みたいな。
風景画の章だから、油断していた……。
第4章のテーマは人物。
どちらもリトグラフ作品なのですが、生きて額縁のなかにいるんじゃないか、と。
ハリーポッターで、額縁の中の絵が動き出すというシーンありますけど、そんな感じでした。
父上の手の感じ(すみません、私は手に惹かれる傾向が)や、ご本人のヒゲの感じとか生きているとしか(頭を抱える)。
第5章のテーマは広告。
芸術作品ばかりではなく、時々は注文制作に応じることもあったという
エッシャー。
蔵書票や便箋、グリーティングカードのデザインもしていたそうです。
蔵書票の展示はなかったのですが、いいなぁ、憧れるなぁ蔵書票。
自分の三男が誕生したときの愛らしい通知カードもありました。
エッシャーの広告をテーマにした展覧会もみてみたいなぁ。
第6章のテーマは技法。
今までの作品もすごかったけれど、ここからもすごい作品が並びます。
最初に触れた『写像球体を持つ手(球面鏡の自画像)』も『眼』もこちらの章に展示してあります。
『男の肖像』という作品は、こちらとはバージョン違いが展示されているのですが素敵だったなぁ。(そして、とあるチョコレートのパッケージを思い出してみたり)
そして、この6章にエッシャーの彫った版木が展示されていました。
【版木】
版画家は、自分が亡くなった後、作品を勝手に複製されないように、ある程度刷った後に版木を壊してしまうそうです。ですから、実際の版木を見るのはとても貴重です。展覧会では1955年に制作された《表皮》という作品の版木を展示しています。ぜひ会場で版木と作品を見比べてご覧ください。 pic.twitter.com/0H329vYQaH— ミラクル エッシャー展 (@escher_ten) June 14, 2018
一番右側の版木。
これを見たとき鳥肌が。
あまりの線の細さと細かさに鳥肌が。
正面から見るよりも、ケースの右側から覗き込んだ方が線が見えやすい、かも?
すーっと見て次の展示へ行こうとしている人の肩を掴んで、もう少し見ていきません?
すごいですよ、この線!!って言いたくなるほど。
それにしても、よく版木が残っていたなぁ。
と、長くなりましたのでこの辺で一回〆たいと思います。
続きを↓こちらに書きました。