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若冲展 特別記念講演⑥

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

さて、若冲展の特別記念講演で聞いた話をメモを頼りに書き起こしてみたシリーズ

いよいよ最終回です。

 

usakameartsandcinemas.hatenablog.com

 

 

 

 

Yは司会の山下裕二さん

Tは辻惟雄さん

Kは小林忠さん

Jはジョー・プライスさん

Eはエツコ・プライスさんを表しております。

エツコさんがジョーさんの言葉を通訳して下さっています。

 

 

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■プライス邸のバスルームの写真

 

Y「象さんの耳のところからシャワーヘッドが」

 

あー、雑誌に出てたの見たことあるなぁ。

なんで買っておかなかったのか、十年前の自分!!と

激しく後悔しておりましたら。

 

 

後日、家族が「あったよ」と。

おおおー。これだ、これだ!

ありがとう、ありがとう。

 

山下氏とジョーさんの対談。

辻先生へのインタビュー、ジョーさんへ≪鳥獣花木図屏風≫の購入を持ちかけた

京都の古美術商・柳さんへのインタビュー、≪動植綵絵≫全点のカラー図版などなど。

 

山口晃氏の絵による若冲の人生双六まで!!

今回の図録と一緒に大切に保管せねば。

 

そして、これがバスルームの写真。

 

Y「意外と狭いんですよね。

 エツコさん、こうゆうことをやってくれる会社があったんですね?」

 

E「サンタモニカに60歳の女性がいまして、写真を見て是非作ってみたい、と。

 このタイルは1インチ四方です。(1インチは約2.54センチだそうで)」

 

Y「では実物よりも少し大きいですね」

 

 

■そして、ジョーさんの背中を流す(ふりをしている)中村氏の写真

 二人とも上半身裸でございます。

 

Y「そして、私も。

 雑誌撮影で、私がプライスさんの背中を流している、という。

 (先ほど載せた雑誌の写真とは、反対の方向から。

 つまり、ジョーさんと中村氏の側から撮った写真がスライドに映っておりました)

 奥にいるカメラマンのオノさん(恐らく、小野祐次さん)この撮影大変苦労されて。

 魚眼レンズで、なんとか撮影して」

 

 

Y「では最後に≪動植綵絵≫の話を少しして終わりたいと思うのですが。

 いま、30幅が一堂に並んで展示されています。30幅プラス釈迦三尊の3幅。

 こうゆう風な形で展示されるのは、今から十年ほど前に京都の承天閣美術館

 ≪動植綵絵≫が里帰りした以来、初めてのことです。

 今後も当分ないでしょう。最低でも10年、もっと、ひょっとしたら私が生きて

 いる間にもないんじゃないかってぐらい。

 先生方は、まぁ……」

 

最後の最後までアグレッシブな山下氏。

 

Y「そうゆう滅多にない機会なので。

 先生方三人それぞれに≪動植綵絵≫の中で、この1点というのを選んでいただきたいと

 思うんですが。 では、ジョーさんから」

 

E「これです」

≪菊花流水図≫

 

E「『御物若冲動植綵絵精影(ぎょぶつじゃくちゅうどうしょくさいえせいえい)』

 という本で白黒でしか見ていなかった」

 

 

Y「それが、日本に来て特別な計らいで」

 

E「京都の国立博物館に」

 

Y「当時、京都国立博物館にいらした武田恒夫先生の計らいでジョーさんは

 実物を見ることができた、と」

 

E「はい」

 

Y「その時の話をジョーさんに伺いましょう」

 

E「本で見たとき白黒で見てたんですが、この一点が見たいとずーっと希望していた。

 ある時、京都国立博物館へ行った際に武田先生が

 「お好きじゃないかもしれないけれど一点ありますよ」と。

 展示室へ行ったとき、色が付いていたから大泣きした、という」

 

(今回の展覧会の図録には、「多分お望みのものだと思うが、しかしながら

 万が一違うものである可能性もある」と言われたという記述になっていました)

 

Y「プライスさん、涙を流されたという逸話があります」

 

E「白黒だと思っていたから(実物を見て)驚いて興奮しちゃって大泣きしちゃって。

 皆、恥ずかしいので部屋から出たという」

 

ちなみに、ジョーさんが見た御物。

数ページ、こちらで見ることができるのですが。

なんと、その中にジョーさんが長年憧れてきたモノクロの≪菊花流水図≫の

ページが載っております。

 

確かにねぇ、モノクロだと思っていたものがこんなにも鮮やかな色だったら

驚いちゃうでしょうねぇ。

 

 

Y「では、辻先生は?」

 

T「私は見る日と、見る場所によって(好きな一点が)変わるんですけど…

 今日は…≪群鶏図≫」

 

Y「この間の日曜美術館では、確か別の物を選ばれて…」

 

たまたま録画してあったので見たところ≪南天雄鶏図≫を選ばれてました。

 

Y「今日は、なんといってもコレ。この絵の魅力というのは?」

 

T「羽毛がバラエティに富んでいるでしょう。組み合わせ、掛け合わせ方が凄いね。

 鶏の数は足の本数から分かるんですが、どれが、どの鶏の羽なのか

 分かりませんでしょう」

 

Y「どの部分が、どの鶏なのか。これ実は見ても分かりにくかったりするんですよ。

 そして1羽だけ正面向きなんですよ。他のはあっち向いてホイみたいに

 いろんな方向を向いている。1羽だけ正面。

 若冲自身の姿の投影だと私は思っているんですが。

 他の絵でも、スズメがワーっと飛んでいる中に1羽だけ白いのがいたり

 (≪秋塘群雀図≫)

 そうゆう1つだけ他と違う、という表現が良く出てくるんですね。

 辻先生の【今日の】一枚は、これですね。

 今日の一枚、っていうとなんだか『美の巨人たち』みたい」

 

Y「では、小林先生の本日の一枚は?」

 

K「私も毎回違うと思いますけれど。

 どれをとっても素晴らしいですが、今日の一点は≪蓮池遊魚図≫」

 

K「私は、多くの方がそう思われると思いますが、この30幅は釈迦三尊に捧げた

 抽象的な絵画だと思うんです。

 仏様に見ていただきたい、という描き方を若冲はしているんじゃないか、と。

 仏様の目でとらえると、水の中だろうが、水の上だろうが、みな見えてしまう。

 そうゆう世界を、この絵は描いているんじゃないかな、と思います」

 

Y「いうまでもなく、蓮の花というのは水面の上に咲くものです。

 ところが、ここには水の底みたいな地面が描かれていますし

 魚は、ま横向きだから、まるで水槽の中を泳いでいるのを横から見ているような。

 考えてみたら、非常に不思議な視覚が合成されているんですが、それなのに

 違和感なくこの絵を見ることができるんですね。

 そして先ほどの鶏じゃないんですが、一匹だけ種類の違う魚が描かれている。

 

 小林先生の仰られた仏様の目で見るっていう視覚。

 ますます≪動植綵絵≫および若冲の作品における仏教的な意味合いというのは

 これからさらに研究課題として残されているのではないかと思います。

 

 最後に、私の一点を。

 ≪芦雁図≫という≪動植綵絵≫の中では地味な部類に入る絵なんですが

 なんと氷が張った池に、まっさかさまに墜落していく雁ですね。

 芦雁図というのは伝統的な画題で、よく描かれるんですが

 こんな風に墜落していく、しかも氷が張ってあるなんていう絵は他にないんですね。

 夢の光景みたいに私には見えるんです。

 若冲の絵にはシュールレアリスムにも通じるような、深層心理とか

 夢の投影みたいなものが、そうゆう要素があります。

 ≪動植綵絵≫の中でも、私は最も怖い絵のように見えるんですね。

 それが昔から心に引っ掛かるような感覚がある絵と思って見ています。

 

 いずれも≪動植綵絵≫は素晴らしい作品ばかりなんですが、

 今回は至近距離で、じっくり見られますから、会場で見ていただきたいと思います。

 

 最後に、この会場の観客および若冲のファンの皆さんへのメッセージを

 先生方から、ごく簡単に短い言葉でいただきたいと思います。

 では、小林先生からお願いいたします」

 

K「NHKの特別番組のディレクターさんが、テレビで見るより実物は素晴らしい、と。

 実物の凄さ、美しさを皆様の曇りのない目でみていただきたい」

 

Y「ありがとうございます。

 では辻先生、お願いいたします」

 

T「今回はLED照明で、非常にクリアで隅々の細かいところまで見えますので

 お見逃しなく」

 

Y「ではプライスさん、お願い致します」

 

E「いつも申し上げることなんですが、絵を遠くの方から見て、そして絵の方へ

 近づいて行って

 絵が何か皆さんに語りかけてくれると思いますので、語りかけてくれるまで 

 じっと待っていれば若冲と、他の作品もそうですけれど、会話ができると思います。

 自分の方から質問するんじゃなくて、絵が教えてくれるのを待っている。

 そうすれば絵のことがもっと分かってくると思います」

 

Y「こうして我々が今この場にいて、そしてこれまでも半世紀にわたって交友関係が

 続いているのも、ひとえに若冲の絵が持っている力がなせるわざなんじゃないかと

 思います。

 過去、若冲ほどこんなに短期間のうちに急速に知名度が上がって多くの人から

 熱狂的に支持されたという例は、今まで他にいなかったんじゃないか。

 まさに若冲が日本美術ブームをけん引していると思います。

 この展覧会は、その記念すべき最大の成果であると思います。

 

 どうぞ他の方々にも、この展覧会並んででも見た方がいいよと仰っていただければと

 思います。

 今日は長時間にわたって、ご清聴ありがとうございました」

 

 

という訳で、長々続きました講演会の記事もこれにて終わります。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

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