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『よみがえる仏の美』展 静嘉堂文庫美術館②

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

静嘉堂文庫美術館で開催されていた『よみがえる仏の美』展。

 

十二神将立像の次に私が惹きつけられたのは、ずらっと段に並べられられた

小さな白い塔。

 

その数、40基あったそうで。

その名は、百万塔。

 

764年(奈良時代後期)に称徳天皇の勅願によって鎮護国家の願いを込めて

製作されたそうで。6年かけて作られた木製三重小塔百万基。

塔の表面を白土で白化粧し、中には印刷した陀羅尼(仏教の呪文)を1巻ずつ

巻いておさめ、東大寺薬師寺など南部七大寺を中心に十大寺に十万基ずつ

分置した、と説明にありました。

 

やることの桁が凄い!!

 

塔の高さは書いてなかったのですが、Wikipediaによると標準的なものは

総高21.4cmとのこと。

中におさめたお経の印刷の製作方法は、まだ不明だそうで。

木版、銅板、スタンプ説があるそうです。

静嘉堂文庫美術館の公式ホームページによりますと、百万塔の中には印刷した

四種の陀羅尼が1枚ずつ納められている、と。

印刷も大変だけれど、それを巻いていくのも大変そう……

 

百万塔の製作についての記載が『続日本書紀』にあり、印刷年代が判明している

現存最古の印刷物の一つである可能性が指摘されている、と。

今回、静嘉堂文庫美術館が所蔵する百万塔すべてを展示したそうです。

40基でも迫力ありましたが、それが百万基。うーん、作ったものを置いておく場所も

相当広い場所を確保しないといけないだろうしなぁ、などと違うことを考え始める私。

 

 

次に私が興味を持ったのが≪古経貼交屏風≫六曲一双。

12枚のパネルを6枚ずつ綴じあわせて六曲一双に仕立てた屏風で、四周に草花模様の

更紗を貼り、左右に開けた孔に染皮の紐を通して結んでありました。

紐で繋がった屏風って珍しいなぁ、と。

 

屛風には絵が描いてある訳ではなく、古経が切り貼りされていたり、

ところどころに布の切れ端のようなものが貼り付けられているという。

 

説明には、蜀江錦(しょっこうにしき)をはじめ法隆寺献納宝物と同じ裂(きれ)などが

多く見られることから法隆寺献納宝物との深い関わりが推定される、と。

屛風の形になったのは、明治時代前後ではないか、と。

 

古経や裂が少しずつあるから、それを集めて1つの屏風にしよう、ということ

だったんでしょうか??

 

 

羅漢図が三幅展示されていて、そのうちの1つを修理する際、補填する絹は作品と

同じ折り目の絹を用いた、と説明にありました。

 

展示の後半部には、修理に使われる道具が並べてあるケースがありまして

その中には修復に使われる絹も展示されていました。

そうそう、こうゆうのを知りたかった!!と大興奮。いつも通り一人で大興奮。

 

欠損部に補填する絹は放射線を照射して人工的に劣化させ、

補填した絹自身が欠損部周囲の絹を損傷させないように、あえて弱くして使用するとか。

欠損通りの形にカッターで切りぬいて糊をつけ、ピンセットで欠損部にはめ込むそうです。

絹が絹を損傷させるなんてことがあるんですねぇ。

 

文化財の修理に使用される宇陀紙は、奈良県中部に位置する吉野町

漉かれる紙だそうです。

国から認定されている選定保存技術保持者の方が漉いたという紙が展示されていました。

楮の繊維に吉野山で産出される石を砕いた粉末を混ぜて漉くそうです。

パリっとして張りがあり、表面が滑らかで柔軟な上に丈夫な紙になるとか。

(この説明を読んだ時、私もそうゆう肌になりたいとか訳の分からんことを

思いました)

 

掛け軸を巻いて収納するときに、作品の表面が密着するのに適した裏打ち紙として

総裏打ちに使用するそうです。

つまり、掛け軸をかけたときに壁に接する部分が宇陀紙ということですね。

 

紙に含まれる石粉(いしこ)がアルカリ性なので、総裏打ちに使用する

古糊(ふるのり)の酸を中和したり、収納時には作品の表面の酸化を抑える効果が

あるそうです。

 

ちなみに、古糊とは小麦のデンプン糊を低温で貯蔵して乾燥後に硬くなりにくくした

弱酸性の糊、だそうです。

 

ちなみに、今回の展示の中に坂田墨珠堂さんという名前が。

検索したら、面白い動画を見つけました!

古糊、補絹(ほけん)、補絹に使う劣化絹、折れ入れ、付け回しなど

描軸を修理する工程も少し見られますので、宜しければ是非。

 

この動画に出てくる皆さん、お元気で修復作業をされていらっしゃるかしら…

いやぁ、不器用なので絶対弟子入りできないけれど、興味深い仕事だなぁ。

 

話を展示に戻しまして。

 

 

文化財は100~150年周期で修理が行われることによって伝えられてきている

そうで。

数百年後に再び修理が可能となるように、数十年後にどのように変質するか分からない

合成の接着剤は使用せず、動物性の膠や植物性の布海苔(ふのり)を絵画の剥落止めに

使用するそうです。

 

膠は1~3%の水溶液にして絵具刷毛や絵具筆で彩色部分に塗布したり、

剥離した絵具の隙間に10%程度の水溶液を面相筆で差し込んで絵具を画面に

定着させたりするそうです。

 

あとは、裏打ちに使用する刷毛、糊刷毛、撫刷毛、糊盆などなど紹介されて

いたのですが。

手首の限界で、描きとめることが出来ず。無念。

 

 

最後に気力で書きとめたのが、掛け軸の補修作業の流れについて。

 

1.表装解体

2.乾式クリーニング

3.剥落止め

4.旧裏打ち紙除去

5.旧折れ伏せ除去

6.湿式クリーニング

7.表打ち

8.旧肌裏紙除去

9.旧補修除去

10.補絹(ほけん)

11.肌裏打ち

12.表装 表装裂の補修

13.増裏打ち(ましうらうち)

14.折れ伏せ

15.付け廻し

16.中裏打ち 表装全体の厚みを調整

17.総裏打ち

18.補彩

19.仕上げ

 

本当は、1つずつの項目に説明も書いてあったのですが。

いかんせん、気力と手が追いつかず。無念。

 

墨仁堂さんという会社のホームページに、修理工程が紹介されてました!ありがたや。

 

 

いやぁ、面白かったです。

展示も見どころが多かったですし、修理工程についても知ることができて大満足。

 

新しい場所だからと躊躇せず、見たいと思った展示は見に行こうと、なるべく見に

行こう!と思う今日この頃です。

  

 

 

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