昨日で終了してしまいましたが、汐留ミュージアムで開催されていた《モードとインテリアの20世紀展》。
展示室前で流れていたビデオが面白かったので自分用にメモ。
モード…流行のファッションを意味する言葉。
ここでは衣服にとどまらず装身具や髪形、化粧なども含めてモードと捉えその歴史を紐解いていく。
19世紀前半、宮廷の女性たちが流行を先導していた。
女性たちは自分たちが着たい服を仕立て屋に作らせていた。
19世紀半ばになると、顧客の要望を待たず自らデザインし、それを提案するデザイナーが登場。
デザインサンプルを複数用意し、顧客が選んだものを顧客の体のサイズに合わせ服を作る新しいシステムが浸透。
これがのちにオートクチュールと呼ばれる。
オートクチュールの登場でデザイナーが新しい流行を創造し発信するという重要な役割を担うようになる。
この頃、フランスでは最後の帝政が崩壊。
貴族に代わり新たに社会で力を持つようになった富裕層やブルジョワジーが、最先端のファッションを楽しむようになる。
現代に通じる女性のファッションは20世紀初頭のフランスから。
女性の活動範囲が広がりスポーツやレジャーが普及し始めた。
ライフスタイルの変化が女性のファッションにも影響を与えはじめた。
フランスのデザイナーであるポール・ポワレがコルセットを使わないドレスを発表。
それまではコルセットでウエストをきつく締め上げた人工的なシルエットのドレスが着られていた。
ポワレはウエストの位置を高くとり、布をドレープさせて身体の自然なラインを生かすという全く新しいドレスを提案。
この画期的なドレスの登場は、その後の女性のファッションの可能性を広げるものだった。
ポワレと同じ頃、コルセットを使わないドレスを提案したのがスペイン生まれのマリアノ・フォルチュニィ。
絹サテンにプリーツをほどこしたドレス”デルフォス”は生地そのものの美しさを生かすというこれまでの女性服にはなかった発想でデザインされた。
1914年、第一次世界大戦が勃発。
全ヨーロッパを巻き込んだこの戦争で、女性も働かざるを得なくなりシンプルで機能的な服が求められるようになる。
ココ・シャネルの名で親しまれているガブリエル・シャネルが登場したのはこの頃。
彼女はシンプルかつ実用的でありながらエレガントなスタイルを実現。
のちに”リトル・ブラック・ドレス”と呼ばれるミニマムで優美な黒一色のドレスを発表。
写真右がリトル・ブラック・ドレス。
(展覧会で撮影可能だったので撮影してきました)
さらにギャルソンヌ・スタイルを提案し女性たちに受け入れられた。
イアリア生まれでパリにやってきたエルザ・スキャパレリは遊び心溢れる独創的なコレクションを発表し注目を集める。
サルバドール・ダリやジャン・コクトーら芸術家とコラボレーションを行い大きな話題となった。
ちなみに展覧会で展示されていたスキャパレリの作品は、一番手前にあるピンクのイブニング・ドレスです。
生地のデザインは画家のマルセル・ヴェルテス。
もう少し明るいピンクなのですが、写真だと暗くなってしまいました。
で、脱線ついでにもう1つ。
今年3月~5月に三菱一号館美術館で開催された《PARIS オートクチュール展》。
そこでもスキャパレリの作品があったのですね!
イブニンブ・グローブ《爪》。
あぁ、この人だったのねぇ!!と。
オートクチュール展で目を惹いたイブニング・ケープもそうだったのかぁ!!
いやはや、ようやく繋がりました。
ポール・ポワレの作品もあったのかぁ……
なんだろう、この記憶力のなさ。
という訳で、遅まきながら展覧会図録の電子版を購入しました。
美しいです、非常に。
作品保護のため、どうしても照明が……だったので、おお!こんなに鮮やかだったんだなぁ、と今さら感動しています。
先ほどのケープも、綺麗なサーモンピンクだったんだなぁ。しみじみ。
ちなみに、honto、kobo、 iTunes、kindle版があるようです。
詳しくは、こちらの記事をお読みください。
と、閑話休題。
第二次世界大戦が終わると、パリではほどなくオートクチュールが全盛期を迎える。
1947年、クリスチャン・ディオールがデビュー。
女性らしいボリュームのあるシルエットが特徴。
戦争の間、したくてもできなかったお洒落。
ディオールは贅沢に布地を使ったデザインで女心に火をつけた。
タイトな上半身のウエスト、そこから広がる長いフレアスカート。
クラシックでエレガントなスタイルはニュー・ルックと呼ばれた。
ディオールは毎年のように新しいシルエットを発表。
ディオールらの活躍で1950年代はパリのオートクチュールが再び世界のファッションをリードしていく。
ディオールとともにパリ、モードを牽引したのがバレンシアガ。
非の打ちどころもないカッティングと縫製により、立体的な美しいフォルムでセレブリティらを魅了。
1960年代に入ると若者のエネルギーがモードを左右するほどに力を持ち始めた。
ストリートで流行していたミニスカートをアンドレ・クレージュはオートクチュールで初めて発表。
大衆的な流行がハイファッション、オートクチュールにも取り入れられるという時代を象徴するする出来事だった。
また同時期、金属や紙などユニークな素材を用いたドレスが登場。
日本でファッションデザイナーとしてのキャリアを築いていた森英恵が1960年代半ばにアメリカへと活動の場を広げる。
洋服という西洋で生まれた衣服に日本の伝統的なモチーフを巧みに取り入れた表現は”東と西の出会い”と高く評価された。
この展覧会では20世紀を4つの時代に分けて構成。
20世紀の幕開け1900年からの20年間はエンパイア・スタイルとアール・ヌーヴォ―様式のインテリアの中でポワレやフォルチュニィらの衣装を展示。
1920年から1939年は、シャネルやヴィオネの衣装をアール・デコ調のインテリアと合わせて展示。
1940年からの20年間はディオール、バレンシアガの作品。
そしてミッドセンチュリー・モダンのインテリア。
最後は近未来を感じさせる設いに、1960年代のファッションを展示。
女性のファッションが劇的に変化した20世紀。
それぞれの時代を代表する洗練されたスタイルを通して、その時代へ想いを馳せ、楽しんで欲しい。
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ファッションを通して時代の変化を感じ、女性の活躍の場の広がりを感じ、ファッションと写真の関係も面白いなぁ、と感じた展覧会でした。