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アルチンボルド展 Ⅱ.ハプスブルク宮廷 その③

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

今回は、『四季』と『四大元素』の連作について書かれた説明パネルから

書いていきたいと思います。

 

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  ↑ここにありました。

 

1569年 当時の君主マクシミリアン2世への新年の贈り物として

『四季』と『四大元素』のふたつの連作を献上。

それぞれにふさわしいモティーフを組み合わせた擬人像として表現。

アルチンボルドは膨大なコレクションの中で培った博物学的な知識と

卓越した自然観察にもとづいてできる限り数多くの動植物を精緻に描き

出している。

それらを皇帝礼賛の寓意やシンボルに配慮しながら巧みに組み合わせ

新しい種類の皇帝の肖像画を生み出した。 

 

果たしてマクシミリアン2世は、この作品たちをどう思ったのか?!

 

図録の説明には、マクシミリアン帝はたいそう気に入ったらしく、複製を作らせて

マドリードの宮廷や他の君主たちにも贈呈した、と。

良かった、良かった。

うちのお抱え画家は、こんなにすごい作品作れるんだもんね!って自慢したかったに

違いない。たぶん。

なるほど、だから同じ連作が複数存在するんですね。

 

ルーブル美術館にある『四季』は、背景に枠のようなものが描かれているんですね。

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ルーヴル美術館のものは1573年制作のものだそうで。

 

本人が複製したのか、それとも工房の人たちなのかは分かりませんが。

あまりにも同じものばかり描いてたら「あ~、飽きちゃったなぁ」とか言いながら

描いてそうだなぁ、なんて妄想してみたり。

 

今回のアルチンボルド展で展示された『四季』の制作年代も

 

『春』1563年 オークの板  王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館

『夏』1572年 カンヴァス  デンヴァー美術館

『秋』1572年 カンヴァス  デンヴァー美術館

『冬』1563年 シナノキの板 ウィーン美術史美術館 絵画館

 

年代も、描かれているものも板だったりカンヴァスだったりという。

 

ただデンヴァー美術館の2点は寸法も、カンヴァスに描かれていることも、額縁も、

来歴も共有しており、7章に展示されているジュゼッペ・アルチンボルドに帰属の『冬』とともに同一連作だったんではないかと図録にありました。

『冬』も真筆と鑑定されていたら、きっと今回の展示で連作の展示室に展示されて

いただろうに。可哀想になぁ(??)。

 

今後、科学的な調査方法も進歩して今まで?マークだったものが真筆と認められる

ことも、その逆なことも起こってくるのでしょうかねぇ。

 

説明パネルに話を戻しますと

 

『四季』と『四大元素』は相互に関係し合うように構成されている。

2つの連作のそれぞれの同じ特性を共有するもの同士を組み合わせる

ことで可能。

大気は暖かい風によって春と、火は暑く乾燥した夏と、大地はからり

とした秋と、水は冷たく湿っぽい冬とペア。

そのため両者を並べると、ふたつの横顔が対話をするように互いに

向かい合い調和に満ちた関係性が強調される。 

 

そうそう、初めはなぜ『四季』は『四季』だけで並べて展示しないのかと思ったら、

四大元素』とペアになることまで最初から考えて構成されていたからなんだな、と。

だからこそ、まず『四季』ができた時点で献上するのではなく、8点揃ってから

献上したのかな、と。

 

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『四季』と『四大元素』の連作を、そのまま並べると『四季』は背中合わせの構図で

四大元素は』向かい合う構図になるんだな、と。

いや、でもこの『四大元素』の並びは、あくまで四季の流れに対応する順番に

並べただけだしな。

四大元素って、四季の春→夏→秋→冬みたいな流れがあるのかしら。うーん。

 

今回の展示のように『四季』と『四大元素』の作品が向かい合うように飾ってもらう

ことを最初から意識してたってことなんでしょうかねぇ。

 

 

 アルチンボルドは、これらふたつの連作において永遠の時の循環を

とおして世界を支配し、万物に調和をもたらす皇帝マクシミリアンを称揚

している。

 

果たしてアルチンボルドは皇帝を心から尊敬してこの作品たちを作り上げたのか、

それとも自分の作りたい作品を作るために表向きは称揚してるようにみせて……

なんて意地の悪いことを考えてみたり。

自分の作りたいものを作るのと、相手の望むものを作ることが完全に一致することは

難しいだろうし。

 

そういえば、何年も前のテレビ番組で久石譲さんが「スポンサーの望むものの中に

いかに自分がやりたいことを入れ込むか」みたいに冗談ぽく話していたのを思い出し

ました。 

 

 前々回、『春』と『大気』について書いたので

 

usakameartsandcinemas.hatenablog.com

 

今回は『夏』と『火』について書いて、この記事を〆たいと思います。

 

 

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 左:『夏』ジュゼッペ・アルチンボルド

 

トウモロコシやナスなど大航海時代を経てアメリカやアジア、アフリカ

からヨーロッパにもたらされたばかりの野菜や果物も含まれる。

 

そうかぁ、今の時代から見ると珍しくないというか、見たことのある野菜たちだ

けれど。当時としては、こんな野菜があるんだ!とか斬新だったんだなぁ。

トウモロコシは1525年以前はヨーロッパでは栽培されていなかったそうです。

 

当時の人と同じ気持ちで見ることはできないことが少々残念ではあるけれど、この

組み合わせは、どの時代にみても面白いだろうなぁ。

今後、野菜の種類が激減するようなことがあったら逆に「昔の地球には、こんな

食べ物があったのか!」ってなったりして???

 

この絵で何が驚いたって、襟元に大胆なサイン。そして年代が入っていたこと。

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模様かのように自分のサインと1572という数字を入れるという。

1572という数字から皇帝に献上した作品ではないということになり、皇帝以外の

パトロン、もしくはコレクターのために制作されたのではないか、と図録に書いて

ありました。

 

なるほど、だからこそこれだけ大胆に自分のサインを入れることができたので

しょうか。

 

 

右:『火』 ジュゼッペ・アルチンボルド(?)

 

こちらも『大気』同様に真筆かどうか分かっていないという。

 

炎や蝋燭、オイルランプ、大砲など火にまつわる品々で構成されています

 

 燃え盛る炎で髪の毛を表現!

かなり血気盛んな感じ?に見えるこの作品は、当方のオスマン・トルコとの間で

進行中の戦争を暗示しているとも。

 

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左下に見える飾りと、耳と鼻の”火打ち金”は金羊毛騎士団の象徴だそうです。

次回で書こうと思っている『冬』の藁マントにも”火打ち金”がデザインされています。

そしてWikipedia金羊毛騎士団について読んだのでありました。

 

今もなおスペインとオーストリア金羊毛騎士団員がいらっしゃるそうで。

いやはや、知らないことが多すぎて困る今日このごろです。