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アルチンボルド展 Ⅲ.自然描写そしてⅣ.自然の奇跡

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

現在、国立西洋美術館で開催中のアルチンボルド展。

1章ずつ感想を書くという無謀な挑戦も第Ⅲ章へ突入しました、ようやく。

 

 

Ⅰ章について書き始めて10行目ぐらいに

「絵を見に行ったつもりが、博物館だった、みたいな」という謎の感想を述べて

おりますが。

ええ、まさにⅢ章からの流れがそうだったのでございます。

 

まずはⅢ章の説明から。

 

自然に対する興味がわきおこったルネサンスには自然をありのままに

リアルに再現する姿勢が育まれた。

さらに16世紀には印刷術の発達ともあいまって博物図譜という絵画

ジャンルが確立し、それによって科学の発展は拍車をかけられる。

知識の拡散において、イメージの力はきわめて大きかったため、水彩や

テンペラによる博物図譜に対する需要は科学者の間でたかまり、やがて

君主や貴族たちもそれに倣うようになる。 

 

これを読んだ時、ふとサントリー美術館の展覧会を思い出しました。

その名も『世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画』展。

 

江戸時代、全国の大名によって美しい植物図譜が数多く生み出されます。

その背景には中国から伝わった本草学の流行がありました。

本草学とは鉱物や動植物の効能を探る東洋の博物学

殖産興業の一環として本草学に熱中した殿様たちは全国的な

ネットワークを築き家臣の絵師と協力しながら競い合うように博物図譜を

制作。

 

殿様たちの目的は殖産興業の一環として、ではあったものの。

お抱え絵師たちとか、 博物学的な発展みたいなところが似てるなぁ、と。

 

 

展示はアンコウやセミエビなど水生動物たちの精密なスケッチ、そして自在置物?!と

私が勝手に早とちりしたブロンズのカエルやヘビたち。

私、この展覧会で初めて”現物鋳造”という方法を知りまして。

図録に詳しい方法が書いてあって、うわー、そうなのか……と。

どうりで、本物っぽいわけですね……。

 

椰子の実形のゴブレットなるものは、木や石とかを椰子の実の形木製なのかと

思ったら、本当に椰子の実が使われていて。

椰子の実って腐らずこんなにも長持ちするんだ!と、一人感動してみたり。

 

Wikipediaによれば

 

外皮からはココナッツファイバーと呼ばれる強靭な天然繊維が得られ、

ロープやマットなどに加工される。
殻は加工して食器や工芸品、あるいは未加工のまま燃料として利用される。

 

作られて400年ほど経つのに壊れないとは、さすが強靭なだけありますね(?)。

なにか保存の加工をしている可能性も勿論ありますが。

 

 

壁に大きく貼り出されたクンストカンマー(芸術と驚異の部屋)の図。

その横にあった説明を書いてくるつもりが、すっかり忘れてしまいました。無念。

 

図録には、その図が見当たらなかった気がするのですが。 

芸術新潮に同じと思われる図が載っておりました。

フェランテ・インペラート『自然史』 に掲載された、インペラート自身の珍品

コレクション部屋を版画化したものだそうで。

 

Wikipediaに同じものがありました。

 

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自然のものも、人工のものも、すべて集めよう、そして1部屋におさめよう、みたいな

感じだったということでいいのかしら。

まぁ、その1部屋の大きさが皇帝レベルだと物凄く大きくなるんだろうけれど。

 

 

図録に、自然と人工が微妙に融合ないしは競合しているかのように見えるオブジェが

高い評価を受けた、とありまして。

なるほど、Ⅱ章にあった鉢が石と鍍金をした銀で作られた飾りの組み合わせだったのは 

 そういうことなのか!と。

 

そしてⅣ.自然の奇跡。

 

正直、ショックでした。

すべてをコレクションする、したいという欲望の対象が人間にも及んでいた、

ということがショックでした。

 

図録の序文に

身体的な障害も神によって遣わされた「自然の驚異」として、しごく

積極的に受け入れられている。

 と。

確かに、そう捉えていたのであれば、と思いたいけれど。

 

コレクションというのは、やはり”人が持っていないものを持ちたい”という抗いがたい欲望との戦いでもあるような気がして。

コレクターのだれしもが、そういう風になるというわけではなく。

そこには、理性や、その人の倫理観など個人的なものが大きく影響するとは思い

ますが。

 

展示品を見ている限り、そして、彼らの扱いを説明で読んでいると驚異というより

好奇のほうが勝っているのではないか、と感じてしまって。

あれ、私この展覧会なにを見にきたんだっけ?とふと考えてしまうほどのインパクト。

 

彼らの存在を含め、クンストカンマーに集められ、植物園・動物園に集められた

ものたちが、学問の発展であったり、のちにアルチンボルドの寄せ絵、上下絵にも

結びついていった可能性があるとはいえ。

 

そもそも1つの部屋に万物を集めようなんて発想自体無理があるにもかかわらずで、

いかに珍しく、いかに膨大に集めるか、ということがエスカレートしすぎたんじゃ

ないかとか、少々怒りつつ見ておりました。

 

でも、この展覧会は行くんだろうなぁ。来年1月の話ですが。

 

www.bunkamura.co.jp

 

アルチンボルドの 《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》も来日予定?!

どんな展示内容になるのか、どんな切り口で驚異の世界を紹介するのか。

興味深いところであります。

 

 

でもなぁ。

人間の好奇心、知りたいという欲求は止まらないということを大英自然史博物館展で

まざまざと見られたしなぁ。

うーん。

 

と、Ⅲ&Ⅳ章は思いがけないことを考えされられた章でありました。 

 さて、残り3章。いつになったら、書き終わるのやら。