調べてみたら徒歩8分。
ならば出光美術館から、国立近代美術館まで歩いて行こう。
でも、そんなに近いかなぁ?と内心思いつつ。
当日歩きだしてみたら、やはりなんだか嫌な予感。
なぜなら出光美術館からお堀へ向かって歩いたら、お堀の端に出まして。
ということは、ずーーっとお堀に沿って歩かなくちゃいけないのでは…
でも、風も吹いていて気持ちいいし、のんびり歩くことにしました。
が、のんびり歩くというより少々暑さにバテつつ歩いたので
結局35分ぐらい歩いて安田靫彦展の会場へ到着。
次回からは大人しく電車にしておきます。
さて、安田靫彦展の後期展示。
私が特に見たいと思っていたのは≪夢殿≫と≪飛鳥の春の額田王≫。
そして、入口はいってすぐのコーナーで≪夢殿≫と遭遇。
なんて美しいんでしょう。
そして、その大きさに驚きました。
当たり前ですが、こんなにも大きな絵を汚さずに描くって凄いなぁ、と。
図録に載っている年譜によると、24歳で肺結核を発病し静養を余儀なくされ
静養後、28歳の時に≪夢殿≫を発表。
静養中に本や画集などで勉強をされていたとのことなので、
その時に「よし、元気になったら描くぞ」と温めていたものが≪夢殿≫に
反映されているのかな、と勝手に想像。
この作品、聖徳太子の服の模様などが浮き出ているように見えたのですが、
これが”彫り塗り”という方法なのでしょうか?
”彫り塗り”とは、
初めに引いた描線を塗りつぶさずに線を避けて彩色する技法とのこと。
こうゆう基本的な用語が分かるような本が欲しいなぁ。うう。
安田靫彦展のショップでも販売されていた、この本面白そうだし、
私の知りたいことが沢山載ってそうな気がする。
≪飛鳥の春の額田王≫は、ようやく会えたなぁという感じが。
最初に見たのは教科書だったのか、もはや記憶にないのですが
(基本的に、記憶力なし)
背景の木々の部分などに細かく金箔が蒔かれていて、画集などでは分からな
かったなぁと、しみじみ見ておりました。
≪卑弥呼≫と同じぐらいのサイズかと思いましたが、若干、額田王の方が
大きいんですね。
それにしても、私が展覧会で思ったのは、安田靫彦氏の草花の描き方が
あまりにも綺麗で。
草花たちは、そのまま絵に取り込まれてしまったのでは?と思うような
作品がいくつも。
特に好きだったのは≪菖蒲≫という作品。
それから≪花づと≫。着物を着た女性が手に日傘と花束を持っているの
ですが着物の柄や、花束にばかり私の目がいってしまい。
女性に申し訳ないと思いつつ、ずーーーっと植物を見ておりました。
あとは独特な草の色に惹かれました。
≪居醒泉≫に描かれている草の色や≪朝顔≫の葉っぱ部分に使われている色。
安田靫彦氏の色への並々ならぬ情熱については、明日再放送の『日曜
美術館』でも見られると思われます。
先週、途中からしか見られなかったのですが明日は録画準備万端です。
今回の安田靫彦展。
一番最初の作品から安田氏の技術の高さと、その年齢に驚かされました。
作品紹介のところに、何歳の時の作品か書かれていたのですが、
皆さん口々に「15歳の描く作品に思えない」「今で言ったら中学生」と。
年譜を読んでいると、その後もたびたび静養をされているようですし
94歳まで長生きされたとはいえ、なかなか体力的に絵を描けなかった
時期を乗り越えて、いかに描けるときに集中して描くか、ということも
考えていらっしゃったのかな、と。
だから、奥様に大事なものは何か?と聞かれ「まず命、次に絵」と仰ったの
かな、と。
最後に図録について。
今回の図録、すごく好きです。
まず、180度パタンと開く。図録のカバーを取りますと
正確には糸かがり綴じ製本というのでしょうか??
この綴じ方だと、2ページにわたって印刷されていても全部綺麗に
繋がって見えるのが嬉しいです。
そして、最初の解説から引き込まれます。
あたかも学芸員さんに説明してもらいながら、作品を見ている感じ。
作品目録・解説のページには、作品ごとに落款印象の写真まで。
丁寧な年譜に、細かな文献目録も。
展覧会も良かったけれど、図録を見てまた思い出して楽しめるし
安田靫彦氏のことについても、さらに詳しく知ることができる。
行って良かったなぁ、としみじみ思う展覧会です。