ミケランジェロ PR

アート・オン・スクリーン『ミケランジェロ:愛と死』

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

 

ミケランジェロ、モネ、ゴッホそれぞれの人生と作品を1時間半で紹介する映画、アート・オン・スクリーン。

東銀座にある東劇で昨日からトップバッター作品のミケランジェロが始まりました。
他に名古屋・大阪・神戸の劇場で上映される予定とか。

チケットを見せて入ろうとしたら、チラシをいただきました。

ミケランジェロ:愛と死が見たくなっちゃうフライヤー。
あ、このイラストどこかで見たことがあるな。

と、思いつつ時間もなかったので席へ向かおうとロビーを歩いていると「◯◯◯◯(聞こえなかった)は18時から開始しますので、お早めにお席へ」みたいなアナウンスが係の方からありました。

はて?

なにかあったのかしら??

席を探しつつ中へはいると、あれ、舞台上に誰かが喋れるように用意がしてある……。
慌てて東劇のホームページを確認。

知りませんでした、いつのまにか壺屋めりさんのトークショーがあることが決定していただなんて。

先ほどのフライヤーも壺屋めりさんが作成されたものでした。

そうそう、この本が面白そうだから買おうかと思ってたんですよねぇ。

壺屋さんはイタリアルネサンス術史が専門で、現在は東京藝術大学で研究を続けられているそうです。

イラストが趣味なので、このフライヤーを書かせていただきましたというような発言をされていて、趣味のレベルが高すぎる!!と一人衝撃を受けた、って話はしなくてもいいですかね。

美術史の研究というと作品に描かれているものの意味や、この人物のポーズは別の作品にもある、みたいな分析が王道だけれど。

ご自身は作品を作る側に興味があり、伝記などにでてくるエピソードなどを集めるのが好きだ、と。

わぁ、私もそうです!!と勝手に同調。レベルが違うのに、すみません。

ミケランジェロは西洋美術史上、生きているうちに伝記が書かれた、しかも数ページではなく大々的に、しかもしかも2つも書かれたレアケースな人だそうで。

1つはジョルジョ・ヴァザーリ(壺屋さんは、こちらを研究されているとか)。

1つはミケランジェロが語ったことを口述筆記した弟子のコンディヴィによるもの。

ヴァザーリは誇張しすぎな面もあったとか。

ミケランジェロは、ヴァザーリに「書いてくれてありがとう」的な手紙を送っているけれど、数年後に弟子に口述筆記させて自伝を出した、と。
もしかしたら自分の意図に反するようなことが書いてあったからかもしれない、と。

映画では、どっちの伝記から引用されたかが字幕に出るので それにも注目して欲しいとのことでした。

ヴァザーリは「同時代の芸術家としてミケランジェロをどう見ていたか?」

コンディヴィは「ミケランジェロは、その時代の人たちにどう見られたかったのか?」を表しているのではないか、と。

 

ミケランジェロは『華麗なる激情』という映画作品で取り上げられていて

これはシスティーナ礼拝堂の天井画を描いた4年間を2時間半かけて描いている。
のに対し、今回はミケランジェロの89年の生涯を1時間半で……
ということで最初は壺屋さんも無理ではないか、と思われたそうですが試写を見てコンパクトでありながら、彼の重層的な性格が浮かび上がっていると感じたそうです。

この映画のオススメポイントとしては

・実際には見られないアングルやアップを見られる

現地へ行けば、その作品の置かれている環境、大きさを確認することができる。

しかし防弾ガラスがあったり距離が遠かったりすることもあって、実物をみても確認できないことがある。

サン・ピエトロ大聖堂の『ピエタ』は、元々どういう場所に置かれ、どういう角度から見るのが正解なのか?が未だに議論されているそうで。
右側から見上げるように見る、床の上に置きキリストの体を見下ろすように見る、といった説があるそうです。

システィーナ礼拝堂の天井画は、二次元(絵画)でありながら三次元的に見える不思議な構成をしている。図版では、なかなかその立体感が伝わらない。
絵画の陰影の付け方が彫刻的で立体的に見える部分があるが、図版などでもなかなか確認出来ない。
しかし、この映画ではそれも確認できると思う。

・ 素描についても、しっかり触れられている

素描は単なる下書きだけではなく、完成されたプレゼンテーションのための素描もある。

ローマの貴族であったトンマーゾ・デイ・カヴァリエーリに素描をプレゼントしている。
それにはミケランジェロからのメッセージが込められているので、それを映画中で確認して欲しい。

ちなみに、この素描『パエトンの墜落』は複数回修正がされていて、しかもトンマーゾが修正を頼んだらしいという。

最終的には、この素描をもとにカメオが作られトンマーゾは大切にした、と。

・作品を解説してくれる研究者たちの自由な感想も面白い

大理石工房の女性が説明する大理石彫刻の作り方も楽しく、参考になる。

ミケランジェロも自ら大理石を選ぶために現地へ赴き、どうやって石をフィレンツェへ運ぶかも指示していた。

川を流す方法もあったが、ミケランジェロと同時代のバンディネッリ(と聞こえたのですが、ちょっと自信なし)は川で大理石を運ぶ途中、大理石が沈んでしまったそうで。

それを見た人たちが、彼に掘られるのを嫌がった大理石が身投げした!と揶揄したとか。ふふふ。

ただ、研究者たちの言うことをすべて信じなくてもよくて自分なりの鑑賞の仕方を見つけるのも楽しいと思う。
彼らの言うことは、こういう見方もできます、というくらいに受け取っていいんじゃないか。

もちろん、私の話も話半分で聞いていただけると、と仰っていたので笑ってしまいました。

そして、興味が出たら映画では紹介しきれなかった作品を調べたり、美術館で彼の作品を見たり、ルネサンス美術のことを知ってもらえたら、ということでした。

思いがけず壺屋さんのお話も聞けて嬉しかったです。

映画は、すごく時間をかけて1点1点を作品を紹介していくわけではないので、作品がでてきたらしっかり目を見開いてみた方がいいかもな、と。

ドローイングに適したインクの作り方も、あ、ちょ、ちょっともう1回見せてもらえませんか、みたいな。まぁ、私の読解力がないせいもありますが。

字幕なので、それに気を取られてしまう部分もあって英語が出来たらもう少し余裕で見られるだろうに(途中イタリア語も出てきたけれど)。

東劇ではクロード・モネが7月14日から、 ゴッホが10月6日から始まるそうです。
チケット確保を忘れないようにしないとなぁ、と思う今日この頃です。