東京都美術館で開催中のボストン美術館の至宝展について、少しずつ感想を書いていくシリーズ第三弾。
Ⅱ章はフランス絵画が取り上げられていました。
ボストン市民は早くからバルビソン派の作品を高く評価し、次いでクロード・モネをはじめとする印象派の絵画が人気を博していく。
パリにおいてさえ、その評価がまだ確立されてないころから印象派とポスト印象派の作品が熱心に収集されてきた。
自国ではなく他国で早くから評価されていたんですね、面白いなぁ。
何か、アメリカの人の心を掴むものがあったんですねぇ。
【担当学芸員の眼】
ジャン=フランソワ・ミレー【編み物の稽古】(1854年頃)
女性は自らの仕事を膝に置き、娘に編み物の手ほどきをしています。窓からは柔らかな光が広がり、簡素な生活が丁寧に、優美に描かれています。ボストン美術館の初代理事長が購入し、のちに美術館に遺贈されました。 pic.twitter.com/LCzDnQq2fW— ボストン美術館の至宝展 (@BOSTON_TEN) 2017年5月26日
自分の好きな絵が自分の好きな美術館に飾られたら嬉しいだろうなぁ。
寄贈・遺贈できる美術品はないけれど、あれならあるんですけど。
展覧会のグッズ売り場で購入したクリアファイルの数々。
でも、すべてを集めている訳ではないからなぁ、中途半端だからコレクションとは言えず。無念。
ジャン=フランソワ・ミレー『洋梨』
ミレーの静物画は3点しか知られていない、との説明に驚きました。
勝手なイメージですが、静物画も沢山描いていそう、と。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー『ボーヴェ近郊の朝』
美しい風景に、しばし足を止めて見ておりました。
絵はがきがあって嬉しかったです。
ウジェーヌ・ルイ・ブーダン『ヴェネツィア、サン・ジョルジョ島から見たサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂』
モネに戸外での制作をすすめた人物として知られている方だそうで。
この方の絵を見たら、あぁ外で描くのもいいなぁ、って説得力がありそう、などと思いながら見ておりました。
アルフレッド・シスレー『サン=マメスのラ・クロワ=ブランシュ』
サン=マメスというのはパリから56キロほど離れた場所にあるそうで。
シスレーは1880~1885年にサン=マメスに滞在し、その間に300点ほどの絵画を制作した、と。
6日に1枚のペースで描いでいたことになりますね。大きさも色々とは思いますが、それだけの絵を置いておける場所があったのか、とか、絵の具はどこで仕入れていたんだろうか、とか。
あまり経済的に豊かではなかったようにWikipediaには書いてあって(後援者がいたという記述もありますが)それでも描き続けたんだなぁ、って。
いつの時代でも、芸術だけで生きていくって凄い覚悟だなぁと思うのでした。
クロード・モネ『ルーアン大聖堂、正面』
1892年の冬に描いた30点に及ぶ連作のひとつ。
大聖堂に面した部屋で描かれ、一日を通じて太陽の光が角度を変えるたびにカンヴァスを取り替えて描いた、と説明にありました。
ただ、制作年は1894年になっていてはて、この2年の差は??
作品として仕上げた、完成したのが1894年なのかしら???
今回、モネの作品が4点展示されていましたが。
そのうち、私が好きだったのは次の2点です。
クロード・モネ『アンティーブ、午後の効果』
空、山、海。どの色も私好みの取り合わせ。
あぁ、ブーダンさんの影響で始めた戸外制作、楽しんで描いてらしたのかな、と。
妄想ですけど。
絵はがきも購入してきました。
クロード・モネ『睡蓮』
今まで、『睡蓮』を何点か見る機会があったものの。
正直、あまり好みではなくて。好きな方、ごめんなさい。
でも、この『睡蓮』はすごく好きでした。色使いと、水面の感じが今までで一番スッと入ってきました。
300点以上の『睡蓮』を描いているそうですから、今後もっともっと好きになる『睡蓮』に出会えるかなぁ。
あぁ、見られてよかったな、と。今後、モネの絵を見たら感じ方が変わっていく、そんなきっかけになりそうな作品2つでした。
もちろん、絵はがきも購入。
そして、そして。
この展覧会でチラシにも大きく使われている作品の登場。
左:『郵便配達人ジョゼフ・ルーラン』
右:『子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人』
【#ゴッホ の見どころ】《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》手にしているのはゆりかごの紐。赤ん坊の末娘をあやしているようです。2人の息子と夫のジョゼフも、家族全員がファン・ゴッホのモデルになりました。一家の肖像画は合わせて20点以上も残されています。 pic.twitter.com/boa5XzJgZu
— ボストン美術館の至宝展 (@BOSTON_TEN) 2017年5月25日
ゴッホはジョゼフを6点、夫人を5点描いているそうです。
そして、今回展示されているジョゼフは最初に描かれた1枚で、夫人は一番最後に描かれた1枚だと考えられているとか。
この一家のことが大好きだったんでしょうかねぇ、そんなに何枚も描くなんて。
夫人よりも、背景の方に目が行きがちだったりして……。
ジョゼフさんの方は、シンプルな背景で、その塗り方も個人的には大好きでした。
綺麗なブルーだったなぁ。
こちらに向けた視線も、どこか優しげに感じられて。
もともとは、あまりゴッホの絵は得意じゃなかったんですが。
ベネディクト・カンバーバッチさんがゴッホを演じたドキュメンタリーを見てからすっかり見方が変わってしまって。
英語版しか発売されていないのが本当に残念!
日本語吹替付きで放送されたこともあるので(私は、それを見ました)ぜひとも日本版DVDの発売を!!せめて、再放送を!!と願うのでした。
絵だけでなく、音楽も、文章も、とにかく人の好みは千差万別でして。
だから、自分の好きなものを好き!って淡々と書いていこうと思っています。
反対に、自分は惹かれなくてもそれを好きな人がいるわけだから、それを批判したり、貶めたりしてまで自分が好きなものの良さを分かってもらおう、という姿勢にだけはならないよう、十分に気をつけようと思うのでした。
何がきっかけで、今まで苦手だったものが好きになるか分からないし。
おっと、すごく脱線。
ボストン美術館にとって初めてのゴッホ作品となった『郵便配達人ジョゼフ・ルーラン』をもたらしたのはロバート・トリート・ペイン2世。
彼は特定の作家やジャンル、作品の数にこだわることなく自身の審美眼で厳選した幅広いコレクションを築き上げた人物だそうです。
かっこいいわぁ。自分の審美眼で集める。言ってみたいものです。
エドガー・ドガ『腕を組んだバレエの踊り子』
ドガの没後、アトリエから未完のままのこの作品が見つかったそうで。
最初に輪郭線をとり、それから部分ごとに手を加え、形態に立体感を与えるために明暗の調子を決めていく。
そうした画家の制作過程を垣間見ることができる。
なるほど、完成した絵からでは、恐らくこう描いただろうという予測はできてもハッキリとは分からない部分もあるのですね。
絵を描く人たちが見る絵の見方と、絵を描けない私が見る絵の見方では全く視点が違うんだろうなぁ。
【担当学芸員の眼】
ポール・セザンヌ【卓上の果物と水差し】(1890-94年頃)
青系の色調の背景と机に、暖色で丁寧に描かれた果物。丸みが強調され、存在感を増して見えます。制作に時間をかけるセザンヌには、花よりも持ちの良い果物が適していました。画家の静物画の特色を表す優品です。 pic.twitter.com/Svs8pbsggY
なるほどねぇ(さっきから、そればっかり)。
画家が描きたいものもあれば、画家の描き方に適した物があるってことですね。
セザンヌは果物を描くことの魅力について
果物は自らの肖像を描いてもらうことが好きなのだ(中略)果物はその香りをいっぱいに放ちながら私たちのもとにやってきて、自分たちがあとにしてきた野辺について、自らを養ってくれた雨について目にしてきた日の出について語りかけてくれるのだ。
セザンヌは果物から沢山のことを聞きながら、絵を描いていたんだなぁ、と。
彼の人となりを知らないので。果たしてこれは、茶目っ気たっぷりに言ったことなのか、大真面目だったのか、と妄想しつつ見てました。
ギュスターヴ・クールベ『銅製ボウルのタチアオイ』
タチアオイが”秋”や”人生の終わり”を象徴すると説明にあって、ほほー、と。
花言葉だと”野心”とか”豊かな実り”だそうで、ずいぶんイメージが違うものだな、と。
まぁ、秋=豊かな実りという図式が成り立ちそうですが。
ピエール=オーギュスト・ルノワール『陶製ポットに生けられた花』
あぁ、久しぶりにルノワールの、この独特なピントが。
昨年のルノワール展で、だいぶピントが合うようになってきたので(当社比)あぁ、美しいなぁ、と。
モネとルノワールには、彼ら独特の物を見るピントがあるような気がして。
沢山彼らの作品を見て、ようやくそのピントが自分の中にも持てるような気がしています。(完全な独り言)
さて、このあと展示はアメリカ絵画、版画・写真、現代美術のコーナーへと続きまして私の感想文も次回で最終回になる、はず、です。