2020年4月に放送された『京の都を守る霊山 祈りの道 大原 静原 鞍馬 貴船』を書き起こしてみました。聞き間違いや変換ミスなどあるかもしれません。ご了承下さい。
エピローグ
1000年の長きにわたり続いてきた世界遺産のまち「京都」。この古の都を支え続けてきたのが、東山、北山、西山の三つの霊山。山々にはご利益たっぷり、霊験あらたかなスポットが溢れています。
その三つの霊山を結ぶのが「京都一周トレイル」という道。今回歩くのは北山エリア10キロ。一日で歩くことができる、題して古代ミステリーロード。さぁ、出発です。
今回の場所
スタートは大原、ゴールは貴船神社の10キロ。
大原
旅のスタートは大原地区。京都では野菜の名産地として知られています。秋から冬の早朝に起こる大原の風物詩”小野霞(おのがすみ)”。
この霞がもたらす朝露が美味しい野菜づくりに欠かせないといいます。
特産の一つが、赤紫蘇。香りが豊かで、地元で何百年も守られてきました。そんな赤紫蘇を使った大原の名物が”しば漬け”。
材料は赤紫蘇とナス、塩だけです。重しを置いて一ヶ月、発酵すれば完成です。赤紫蘇の風味とほどよい酸味が絶妙です。実は、しば漬けは大原が発祥と言われ平安時代から親しまれています。
そんな大原は女性にまつわるエピソードが多い場所です。
見えてきたお寺は三千院。こちらは「女ひとり」という歌で有名です。この大原、どうして恋に疲れた女性が来るかといいますと。あまねく人々を救ってくれる仏様がいるから。
国宝・阿弥陀三尊坐像。
訪れる人々を和ませる穏やかな表情です。
毎年春、大原で行われる”大原女(おはらめ)まつり”です。かつて、ここ大原に生きる女性を大原女と言いました。頭に薪を乗せた姿です。かつて重い薪を遠く京の町まで売りに行った大原女。みやこびとの生活を支えていました。
静原地区
大原を出発して1時間。静原(しずはら)地区です。ここは紅葉の名所として知られています。
なかでも是非立ち寄りたいのが大銀杏。この大銀杏は静原地区のシンボルです。町のどこからでも見える守り神。
大銀杏がある静原神社。静原の名前の由来は京都が生まれる遥か前、天武天皇が敵に襲われたとき、この地に隠れ心を静めたところから名付けられたそうです。
鞍馬寺
静原から歩くこと2時間。ここからは険しい山岳地帯です。
到着したのは鞍馬寺(770年創建)。本殿に続く1キロの道は急勾配。かの有名な平安歌人・清少納言もこの坂に音を上げたとか。
登ること30分、やっと本殿に到着です。
こちらは鞍馬寺の本尊の一つ”護法魔王尊”。天狗のモデルとされています。
境内には、そんな天狗伝説が残る場所も。それが、こちら。”木の根道”。
ここは岩盤が多く土が少ない山。そのため木の根っこが地下にもぐることができず、独特な景色を生みました。
この場所で修業したスターがいます。
源義経です。義経は7歳で鞍馬寺に預けられ、それを鍛え上げたのが天狗だとか。実はこの山、実際に天狗と間違われたある動物が住んでいます。
木の間を飛ぶ、あの動物です。
それは、ムササビ。月明かりの夜、地面に映るムササビの影。その姿を昔の人々は天狗と思い込んだそうです。
天狗伝説がある蔵馬。その祭りも独特です。
京都三大奇祭のひとつ、”鞍馬の火祭”。(平安時代から続く行事。毎年10月に行われる)
無数の篝火が山の霊験あらたかさを表しています。
鞍馬山を降りたら最終地点。
貴船神社
川が見えてきました。貴船川(きぶねがわ)です。実は京都市内を流れる鴨川の源流のひとつです。
ここ貴船地区は京都の人々にとって大事な水源地。その水を守ってきたのが貴船神社です。水は濁ってはいけないので、神社の名前は”きふね”。
祀られているのは、”高龗神”(たかおかみのかみ)。水の神様です。そのため、ここの水は神水と呼ばれています。
占いも水にちなんだものなんです。おみくじを水に浮かべると文字が浮き出る水占。
本宮を抜けて奥に進むと料理旅館が並びます。旅館のオススメは貴船の水を活かした料理です。
料理旅館主人・鳥居さんは「水の硬さといい、含まれているミネラルもね、そういうのもちょうどいい優しいお味になりますから」。
そんな貴船の水を活かした人気メニューが松茸の土瓶蒸し。松茸と出汁の香りが絶妙に調和した風味豊かな一品です。
貴船神社の最終地点、神社の水が御神水といわれる起源となった場所です。奥宮(おくみや)です。ここにあるのは龍穴(りゅうけつ)。雨を司る龍神が住まうとされる穴です。人目に触れぬよう龍穴の真上に社が建てられ大切に守られてきました。
平安時代には勅使がたびたび雨乞いの祈祷に来たといいます。
京文化を生んだ水の源流が、ここにありました。
今回は大原から貴船神社まで旅をしました。みなさんも古に思いを馳せながら歩いてみてはいかがでしょうか?