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見たことのない文化財『百済観音』

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

3Dスキャナーで文化財を計測し、超高精細な3DCGがなんちゃらの、とにかく普段は見られない角度からも文化財を見ることができる番組。

”遮光器土偶”や”洛中洛外図屏風 舟木本”のバージョンもあったのですね。残念、見逃しました。

 

百済観音の回を自分用にメモ。

 

公式ホームページ

8K文化財プロジェクトとは?

日本で最も歴史ある博物館・東京国立博物館などに所蔵される文化財を最新テクノロジーを使って”写し取ろう”というプロジェクト。

誰もがよく知る有名な文化財を超高精細な3DCGにして、まるで実物に見まがうようなもう一つの文化財を作る。これを使えば展示では見ることのできなかった至近距離まで文化財に近づいたり、文化財の裏側や誰も入ったことのない文化財の内部を鑑賞することができる。

百済観音とは

現存する世界最古の木造建築・法隆寺の有名な文化財。国宝・観音菩薩立像 百済観音。

飛鳥時代に作られた日本の古代彫刻の最高傑作として国宝に選ばれた。

普段は像を保護するためガラスケースに入れられ大切に祀られているため近づくことはできない。

台座から光背の頂(いただき)まで、およそ3メートル10センチ。

しなやかで美しいその姿は東洋のビーナスとも讃えられ、人々の苦しみを取り除いてくれる観音菩薩として信仰を集めてきた。一番の魅力は穏やかなほほ笑み。飛鳥時代の仏像にみられるアルカイックスマイルでモナ・リザの表情にも通じると言われている。

8K文化財になった百済観音

百済観音の全身をくまなく3Dスキャナーで計測し、そこへ140箇所から撮影した超高解像度の画像を合成。史上初めて百済観音を、そのまま写し取ることに成功した。

ほほ笑み

8Kで百済観音の顔に近づいてみると、黄色に見えるのはもともと塗られていた顔料。かつては顔全体が、この黄色に近い色だったと考えられる。鼻や頬など全体に広がる灰色は整形のための素材。漆に石や土の粉を混ぜたもので、木だけでは表せない更にこまやかな表情を作ったと考えられている。

仏師、僧侶でもある彫刻家の吉水快聞さん「この観音様、ちょっとやはり拝観しても高い位置にお顔があるんですよね。なのでそれこそ単眼鏡とかで見させていただくんですけれども限界があるんですよね。どこまで彫っているというのは私自身が分かっていなかったんですけども、この時代のこの仏様を作った方がですねお顔をしっかり作るんだという強い意志みたいなものが感じるなあと思います」

百済観音が作られたのは初めて仏教が伝わった飛鳥時代。

仏像を初めて見る人もいた時代、丁寧に作られた美しいほほ笑みは仏教の魅力として映ったのかもしれない。

装飾品について

百済観音が生まれた飛鳥時代、すでに様々な種類の仏像が作られていた。聖徳太子をモデルにした釈迦如来像や、病気を治すと言われる薬師如来像など。そんななか、観音菩薩である百済観音を作るには大変な工程があった。

それは像がまとう装飾品。

菩薩はお釈迦様の王子時代の姿がモデルのため華やかに飾らなければならない。全身で6点の飾りが使われている。

まずは顔の左右に垂れている飾り。これは銅板を切り抜いて作られており、冠を留めるためのリボン。本当は布で作られるので、たゆたうように綺麗な曲線を描いている。透彫(すかしぼり)も見事。

透彫は古墳時代に王冠や馬具を飾った技術で、百済観音には日本で培われた技法も使われている。この飾りも当時は金色だった。

お香の油煙(ゆえん)が表面に付着したりすると、だんだんと金色がなくなっていく。吉水さんいわく、100年、200年というスパンで金は劣化していく、と。

この百済観音の装飾品には不思議なエピソードが伝わっている。頭につけている冠・宝冠が明治時代までの一時期行方不明に。そして宝冠が失われている間、百済観音は観音菩薩ではなく全く別の仏にされていた。

その謎を解く鍵は、宝冠に小さく刻まれた”あるもの”。

宝冠の真ん中にいらっしゃるのは阿弥陀如来。これがあることで観音菩薩ということが分かった。(すごく、ゆるキャラのような阿弥陀如来様で微笑ましかったです)

宝冠に刻まれた仏は”化仏(けぶつ)”と呼ばれ、およそ1500年前の仏教の経典にも記されている。

天冠中 有一立化佛 「観音量寿経」より

観音菩薩のには一体の化仏あり

つまり、化仏が刻まれていることが観音菩薩の証し。宝冠がなかった頃、百済観音は知恵を授ける仏・”虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)”とされていた。

法隆寺を建立した聖徳太子が虚空蔵菩薩であるという説があり、聖徳太子への信仰が盛んになるなかで百済観音は宝冠が外され虚空蔵菩薩に変わっていったとも考えられるとか。

(ここで、宝冠がなかった頃の姿が再現されました。うむ、だいぶイメージ違いました。ゲストの大阪大学大学院教授・藤岡穰さんが、すっぴんのお顔になっちゃったみたいですね、と。確かに)

百済観音の内部

2020年3月、東京国立博物館で百済観音をCTスキャンにかけ内部の撮影が初めて行われた。

(ああ、本当は展覧会が行われる予定だったのに中止になってしまいましたよね。私も前売り券を購入して楽しみにしていたのに……せっかく東京まで百済観音がお越しになったのになぁ)

仏像の中には空洞が広がり、数多くのノミの跡や木目が見える。百済観音は顔や体はクスノキ、手に持った水瓶(すいびょう)などはヒノキで作られている。

(ちなみに水瓶の正面には釘を打った痕跡があり、裏側の丸い繋ぎを貫通して本体に達しているとのこと。手だけでなく本体に固定されているんだそうです)

足の下には下駄のような”ほぞ”が施されていた。”ほぞ”は、仏像をしっかりと台座に固定するための工夫とのこと。

百済観音を彫った人の思いに迫る

ゲストの吉水さん、事前にAR(拡張現実)を使いながら百済観音を彫られたそうです。

上から百済観音を見て喜ぶ吉水さん。通常では見られないアングルに興奮されています。確かにそうですよねぇ。

髻(もとどり)という髪を頭の上に集め束ねたものが、三角形っぽい形をしているのも上から見ないと分からなかった、と。

彫り進めるうち、百済観音の唇に注目。「目と口と比べると、この(彫った)人はやっぱり口に興味を示してるし結構複雑な形してて面白いですよね」

口角が少し上がり、その動きに合わせて頬が膨らみ更に顎も僅かに引き上げられている。

「仏像というものは結構自分が出るんですよ。うそつけないところがあって、やっぱり当時の信仰とか自分自身の信仰とか自分がこういう像にしたいっていうのをやっぱり全面に像というのは出てしまうので」

 

世界でも珍しい仕掛け

VR(仮想現実)で百済観音と向き合ってみると、気になるものが。

竹の形をした支柱の根本に山が彫られていて、この山は仏教の世界で”須弥山(しゅみせん)”と呼ばれる想像上の山。

なぜここに須弥山があるかといえば、観音菩薩の本当の大きさを伝えようと施されたもの。須弥山と比較することで、百済観音がどれだけ大きいと信じられていたかが分かる世界でも珍しい仕掛け。

もし、彫られた山が富士山と同じ高さだとすると……百済観音は大気圏を飛び出すほどの大きさになる。仏教の経典では須弥山は富士山より遥かに大きいとされ、百済観音は宇宙の果てを超える大きさだと考えられている。

吉水さん曰く、「観音っていうのは観世音(かんぜおん)というのが正式な名前で、世の音を観じる。観る(みる)という菩薩ですね。それは人々の声を聞くっていうふうに考えられるんですけれども、その力が絶大だ、と」

この時代の百済観音は、「おそらく”死”というものの救いではなくて人々の苦しみの声を聞いてそれに対する救済をしてたのかなあという気もするんですが。仏教は結構そういうふうな(これから先どう生きていったらいいのかというような)思想の方を初期の方はしておりますので自分自身がですねどういうふうにすれば救われるのか。それに対して観音様に救済を求める。それに対して観音様が答えてくださるような気はしますね」と吉水さん。

 

映像も美しく、見たことのない見ることのできないアングルや、過去の姿、どれぐらいの大きさを想像していたのかまで堪能することができる面白い番組でした。

もっともっと色々な文化財が見られたら嬉しいなぁ。