Eテレで毎週水曜日の05:55から始まる浮世絵EDO-LIFE。
5分間の番組ながら、毎回1枚の浮世絵を紹介してくれる面白い番組です。
今回の浮世絵
歌川国芳の『荷宝蔵壁のむだ書き(にたからぐら かべのむだがき)』です。
さて、これは??
針山のような手や、強そうには見えない刀。
北斎や広重らと肩を並べる浮世絵師・歌川国芳の作品とは思えないのですが……。
タイトルにある「むだ書き」とは「落書き」のこと。
「荷宝」とは「似たから」、つまり似ているにかけているそうです。江戸の人たちの駄洒落好きって、すごいですよね。
こう見えて(?)歌舞伎役者の似顔絵というのが驚きです。
誰が誰なのか?
例えば、この女性。「花ぞの」と書いてあります。
歌川豊国『五節句之内 文月 斎藤太郎左衛門 永井室花園』
「花ぞの(花園)」とは役の名前で、四代目尾上梅幸の当たり役なんだそうです。梅幸は上品な美人を演じるのがピカイチだったとか。
「小さくて丸い目が口元がそっくりですね」というナレーションに、う、うん、そうだな、と。
こちらの男性の後ろに見える相合い傘。歌舞伎では恋が叶わぬ男女が心中へと向かう場面の演出として使われたんだとか。
で、この男性は清七を演じた五代目沢村宗十郎。かぎ鼻に、カっと見開いた切れ長の目が似ているんだそうです。
国芳の狙いとは?
なぜ、わざわざ落書きっぽく役者たちを描いたのか?
それは江戸後期の「天保の改革」があったから。役者や美人画は贅沢品として厳しい取り締まりを受けたそうです。この絵が描かれたのは、その直後。
落書きを装って規制をかいくぐろうとした国芳の反骨精神、そして法令を逆手に取った遊びなんだとか。
国芳が普段描いているのはお客が喜ぶようカッコよく描く必要があるけれど。落書きだといえば自分の思い通りに描ける、と考えたのかもしれないそうで。
猫の正体
ところで、この猫は一体?
頭巾をかぶって、楽しそうに踊っている??
この猫の正体は……
歌川国芳『見立東海道五捨三次岡部猫石の由来』
後ろの大きな大きな化け猫、ではなく。
左下の子。
尻尾が二股に分かれているのが猫の妖怪「猫又」の証なんだとか。
!!左側の子は、嬉しくて尻尾ぶんぶん振ってるのかと思ってました!!
それにしても、ふざけて描いたのかと思っていた浮世絵がまさかお上への抵抗だったとは。国芳、そして浮世絵に携わる人たちの熱い想いを感じました。