Eテレで毎週水曜日の05:55から始まる浮世絵EDO-LIFE。
5分間の番組ながら、毎回1枚の浮世絵を紹介してくれる面白い番組です。
Contents
今回の浮世絵
東洲斎写楽の『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』です。
写楽が残した最も有名な一枚とか。
さてこの男性の正体は?
この男性が着ているのは町人が好んだという縞柄の着物。
あえて袖を抜き、羽織るように崩して着ている。
普通は剃り上げているはずの”月代(さかやき)”部分が伸び放題。
この出で立ちからすると泥棒か、浪人か、とりあえず堅気の人ではないことが分かるんだそうです。
実はこの男性、『恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)』という歌舞伎に登場する江戸兵衛という”ならず者”。
そして江戸兵衛と向き合うように作られたのが
右:『市川男女蔵の奴一平』
一平は武士の家来で、主人が若殿様から預かった300両の大金を運んでいるところ。その金を奪おうとしている江戸兵衛、というシーンだそうです。
この頃、すでに歌舞伎ができてから200年ほど経過しており歌舞伎が一大エンターテインメントとして老若男女に受け入れられていたそうです。
人気スターを描いた”役者絵”もたくさん作られファンの人たちが買っていたとか。今も昔も、好きな俳優さんの写真(浮世絵)が欲しくなるのは変わらないようで。
浮世絵に描かれるぐらいだから、江戸兵衛を演じた役者さんもトップスター!なのかと思えば。実はこの舞台のメインキャストたちは市川海老蔵などの誰もが知る千両役者さんたち。
『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』の左上に「大谷鬼次」と書いてあります。
これは最初から浮世絵に刷られていた訳ではなくて、この浮世絵を購入した方が役者の名前を忘れたくなかったのか、メモしたものなんだそうです!
確かに、名前が入ってない浮世絵も……
大谷鬼次とは?
大谷鬼次は悪役を得意とする役者さんでしたが家柄に恵まれず、今後も主役を演じることは難しいだろう、という脇役専門の中堅役者さんだったそうで。歌舞伎の世界で生き残るには、一回一回の芝居が踏ん張りどころ。
それに対して、一平役を演じるのは市川男女蔵。いずれは主役も演じるだろうと期待される注目の若手。未来の明るい二世歌舞伎役者。
『恋女房染分手綱』で江戸兵衛が登場するのは、このシーンだけだといいます。東洲斎写楽が鬼次を描いたのは、この1シーンにかける鬼次の気迫を感じたからなのか?写楽は脇役の鬼次を、まるでトップスターのように描いたのだそうです。
だから、この浮世絵を購入した人も鬼次の演技に感動して鬼次の名前を書き入れたのか?
裏付けはできませんが、そうだといいな、と思いました。でも、裏面に小さく名前を書くのではなく堂々と書くというのも凄いな、と。果たして、その後の鬼次さんはどんな活躍をされたのか。気になります。
浮世絵EDOーLIFE『落書き?名作?衝撃の一枚!国芳“荷宝蔵壁のむだ書き”』
浮世絵EDOーLIFE『花見の名所 珍風景? 歌麿”三囲神社の御開帳 向島の花見”』